こんにちは。
花粉症がようやく終わったと思ったら急に夏日...。
身体に応えるので、夏本番の前に体を鍛えておきたいと思う今日この頃です。
さて、本日は「信じる者は救われる」という言葉を取り上げてみます。
調べて知ったのですが、諺ではなく、聖書の一節のようです。
ブログ主はキリスト教徒ではないので、語弊を避けるために意味は取り上げません。
ただ、これほど一般的に認知されているという意味で、興味深いですね。
先日「急がば回れ」の回で、論文から見える「わざ」に関して、「自分」や「成功」というキーワードを出しました。
one-horn-sheep.hatenablog.com
このキーワードから、「自分を信じる度合い」についての研究テーマを思い出したのと、
「○○を信じていると××という結果になる」という内容は、心理学の多くの研究に共通する裏テーマだと思い、論文を探してみました。
Ozyilmaz, A., Erdogan, B., & Karaeminogullari, A. (2018). Trust in organization as a moderator of the relationship between self‐efficacy and workplace outcomes: A social cognitive theory‐based examination. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 91, 181–204.
→https://doi.org/10.1111/joop.12189
まずこの研究では、以下の2つの「信じる行為」の効果を調べています。
- 会社に対する信頼:所属する会社の事業やその意図を良いものだと評価する程度
- 自分に対する信頼:業務に必要な方針やスキルを自分が実行できるという期待
注目したいのは後者で、掘り下げると論文の面白みが増すので補足します。
古くからある理論で、人の「期待」を以下2つの視点で区別する考え方があります。
- ある結果が生じる事を信じる度合い→結果期待
- ある結果に必要な行動を実行できる度合→効力期待
たとえば、「次のコンペで、この案件を受注できる」と信じる度合いが結果期待で、
「コンペで他社に無いアイディアを考案できる」と信じる度合いが効力期待です。
上記の「自分に対する信頼」は、後者の効力期待に該当します。
(専門的には「自己効力感(self-efficacy)」とも言い、更に細かく区分もできますが、ここでは割愛します)
興味深いのは、この信頼は、実際の実力如何と別に効果を発揮することです。
論文では、会社を信頼している場合、自分を信頼しているほど、仕事の出来が良かったり、業務外でも職場の役に立っていることが確認されました。
(なお、自分への信頼は従業員自身が回答し、仕事の出来等は上司が評価しています)
なぞらえるならば、「自分」を信じる者は「自らに」救われる(成果が上がる)といったところでしょう。
自分への信頼を高める方法についても、探せば論文が見つかるはずです(小さな成功を積み重ねるといった経験 など)。
機会があれば、そちらも紹介していこうと思います。
また、人事担当者や経営者的にドキッとする効果も確認されました。
この論文では、従業員の会社への信頼が低い場合、自分を信じるほど、会社を辞めたいと思っていたのです。
より良い職場で自分の力を活かしたいということですから、従業員側としては至極当然の考え方でしょう。
職場にハイパフォーマーが居るなら、プロジェクトや業務の意図を明朗に説明したり、場合によってその人の意見も取り入れて、会社への信頼を保つ必要がありそうですね。
それでは、今回はこの辺で。
明日からは平日ですが、後半と併せ、総じて良いゴールデンウィークなりますように。
p.s. 上記の結果をよく読むと、「○○の場合は~となる」という具合に、条件よって効果が異なる様子が表れていることがお分かりいただけるかと思います。
研究者自身は、このように現象を細かく記述できると歓喜する...という話は置いといて、「こういう結果も示せるんだね」と、人文科学の研究手法についても興味を持ってもらえたら幸いです。