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諺などのキーワードから人文系研究を紹介するブログ

【朱に交われば赤くなる】赤くなりたくないときは

こんにちは。
先週は投稿できず、すっかり新年度になってしまいました。
新年度ということで、今回は、諺【朱に交われば赤くなる】を取り上げます。

周囲の人間関係から、より良くも悪くも影響を受けやすい、との意味合いですね(調べるまで、ネガティブな意味だけと思い込んでました)。

 

心理学にも、この手の研究が古くからあります。
その1つのテーマ「同調圧力(peer presure)」について、よくある現象として、最近も報告が確認できました(たとえば、飲酒の誘いを断りづらい など)

そうした中、大学生がどんな同調圧力を受け、どんな原因と対策があるのか、といった内容をまとめた資料があったのでご紹介します。

 

Liu, Y. (2022). A Survey of the Causes and Effects of Peer Pressure in College Students. Proceedings of the 2022 3rd International Conference on Mental Health, Education and Human Development (MHEHD 2022). 
https://doi.org/10.2991/assehr.k.220704.079

 

この研究ではまず、大学生が体験しがちな同調圧力として、(ポジ/ネガを区別せず)以下のようなものを報告しています。

  • 仲間との活動参加:友人との付き合い、パーティーへの参加、異性関係の追求 など
  • 仲間のルールに従うこと:服装、音楽の好み など
  • 学校活動への参加:学習や課外活動 など
  • 非行:薬物・アルコール、性交渉、窃盗、破壊行為、軽微な違反 など

一部海外らしい内容も含まれていますが、日本の大学生でも、
「自分の好みじゃないけど、友達が好きっていうし...」といった具合に、仲間内の付き合いやルールについては一般的かと思います。

 

そんな同調圧力が、勉強・就職・感情的なストレスにつながると指摘しつつ、
主な原因として、「比較する心情」「アイデンティティの欠如」などを挙げています。

総じて、大学生も心身は発達の過程であり、「自分らしさ」をまだ確立できておらず、
周りと比べた自分を気にしてしまうので、同調圧力を断りづらいといった内容です。

 

こうした原因から対策も提案されてはいるものの、自助努力を促す内容に偏って見えたので、詳しくは取り上げません(概して、「自分らしさ」「自分の価値基準」を持つことで、良し悪しの判断を高めるべき、というものです)。

また、「そうはいっても付き合いが...」というのが現実ですから、すぐ使えるに「わざ」としては、やや導入しづらいものがあります。

 

そこで、ブログ主の個人的な意見として、「複数の所属を持つ」ことを提案します。
大学生であれば、学部学科の友人に加えて、サークル・他大・アルバイト先、社会人であれば、職場以外に、旧知の友人、習い事などでサードプレイスを持つ、といった具合です。
所属を新たに増やさずとも、SNSなどを通じて、過去に付き合いのあった人達や、家族と交流を深めることも、現在の主軸とは別のコミュニティを持つことにつながると思います。

 

この提案の利点は、まず、色々な価値観に触れることができます。
所属するコミュニティが限られていると、価値観も狭くなりがちです。
逆に所属が増えると、多様な価値観を知り、多角的に「比較」できるようになります。

また、少し聞こえは悪いですが、複数の所属は「保険」になります。
あるコミュニティで誘いを断って嫌われても、別のコミュニティの仲間と付き合っていくことができます。
これにより、自分の好みと違えば、考え方・やり方を貫けたり、誘いを断りやすくなるでしょう(そもそも、多様性が認められないコミュニティなら、早々に見切りをつけるというのも、1つの手かもしれません...)。

 

個人的にも、大学で体育会の引退を機に初の定期アルバイトを始めて、この効果を実感しました。
以来、院生時代は、所属以外、専門外の勉強会にも参加したものです。
そうした縁が、研究の視野を広げ、就職につながったこともあり、お勧めできる対策です。

 

さて、今日はこの辺で。2週分という訳ではないですが、長くなってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございます。

皆様の新生活、特に大学生・新入生の新学期が、健やかなものになりますように。

 

 

p.s. 今回取り上げた研究を「資料」と呼んだのは、「学会発表」だったためです。
他の研究者からの指摘(査読)を受けて刊行される「論文」と異なり、多くの学会発表は誰でも刊行可能です(査読の無い論文や、査読がある学会発表もあったりはしますが)。

成果をまとめた研究者に敬意は表しつつ、内容の信ぴょう性については、慎重になるべきと言えます。